わかりにくい見積り改善
ユーザー向けに価格透明化
「建築業界の見積りはわかりにくい。信頼も置けない」-これは長い間ユーザーから指摘されてきたこと。一品生産であることや業界特有の慣行、下請(取引)業態が透明化を阻んできたのは確かだが、こんな不況時代にそんなことをいっていたのでは、顧客離れが進むばかり。信頼性のある見積りをいかに正確に、早くユーザーに提供できるか、これこそがいま工務店に課せられている最大の課題だ。

工種別から部分別に変えバラツキなくす
 東京の地場工務店・(株)建匠(東京都目黒区・辻隆夫社長TEL03-3493-8666)は、従来の工種別見積・積算方法ではなく、部分別(部屋別)見積とすることで、積算担当者ごとの個人差をなくし、積算見積方式を標準化したコンピュータシステム「建築積算見積システム」を開発。現在は、オフィスコンピュータ上で稼働しているが、1年後あたりを目途にパソコンに載せ替え、工務店へのオープン販売も考えている。 
 辻社長は「これまでの工種別見積では、たとえば、同じ部材で同じ面積の工事であっても、その見積りは拾う人によって数量がまちまち。しかも工務店自らが数量を拾っているところはほとんどなく、下請け業者に拾わせているというのが現状だった。たしかに工種別の見積もりは、下請管理に適した見積形式だが、一般の人には内容がわからないし、設計者にもチェックできない。一般の人にわかる見積形式で情報を提示しなければ、住宅の適正価格を、内容ではなく坪単価で判断する、という間違った認識がなくならない」と指摘する。 
 そこで、同社が昭和60年頃から研究・開発してきたのが、部品管理、外注管理などが必要な自社管理には工種別見積書を、施主・設計事務所に対しては部分別見積書を使用し、相互にデータの変換ができるシステム。
 システムの概要は、
①デジタイザー(寸法測定機付ドローワー)を使って壁・床・天井・開口部などの数量を自動的に拾い出し、時間の短縮と精度の向上をはかる
②部位別積算数量に対して仕上表、家具備品類の登録を画面と対話形式で行なうことで拾い落しをなくす
③工事原価管理のために部位別見積データを工種別見積データに自動変換し、集計ミスがなく、仕様などの設計変更にも迅速に対応できる
④工種別見積データに対して単価調整によるシミュレーションが自由に何度でも行なえる
⑤工事発注システム、工事原価管理システムと連動することで、工事実績を次の見積にフィードバックできる、といったこと。 
 さらに、同社ではホームページ(http://www.kensyo.co.jp/)で、このシステムを応用した建築費のシミュレーションを一般公開。ユーザーが好みの仕様・仕上げを選択できるようになっており、「住宅価格が仕様によってどのように変わるかわかり、坪単価のあいまいさ、不透明さを実感してもらいたい」と辻社長は話す。
《出典》新建ハウジング (10/07/20) 前頁      次頁