◇天声人語◇
最近のことばから
 入社式でニチメンの渡利陽(わたりあきら)社長。「第1に、○×人間はいらない。第2に、仲良しクラブの人間はいらない。第3に、当社は不沈艦ではない。この三つの覚悟が嫌な人は、すぐお帰りください」

 そろそろ来春入社の採用試験も始まった。どんな人間が欲しいか、との問いに、TOTOの重渕雅敏(しげふちまさとし)社長。「機械は使えても機械には使われない人間だ。インターネットの発達で、世界中の人と会わずに商談できる時代が近い。だがEメールでしか知らない商売相手から、季節のあいさつが手書きのカードで届いたら、どんなに新鮮でうれしいだろう。そんな気持ちを大事にできる人がいい」

 サッカー世界ユース選手権の決勝を前に、日本チームのフィリップ・トルシエ監督。「日本のサッカーは、すばらしいと思う。だが、もっと表現しないといけない。主張しないといけない。外国をコピーする必要はないんだ。自分たちもフランスやドイツと同じように強いんだ、という気持ちを全体に持つことが大事なのだ。でもユース代表のような若い世代の選手たちは、それが自然にできている」

 朝刊1面『折々のうた』の連載が、1日から再開される。筆を執る大岡信(まこと)さんのあいさつの一節。〈世の中には、スピードと効率と時々刻々の変化と刷新を追って、息を切らして急いでいる人びとがいて、彼らが現代社会を引っ張っている人びとであることは、どうも疑いの余地がないようである。「折々のうた」はそういうところには定位置を持たないようにしたい。……私は読者の心の泉に毎日小さな石を投げ込むだけである〉

 東京・新宿の末広亭の席亭(経営者)として寄席文化の灯を守ってきた杉田恭子さんが亡くなった。80歳。落語協会によると、遺言は「葬式は簡素に……。お店は休まないでください……商売が大事、お客様が大切」。
《出典》朝日新聞 (11/04/30) 前頁      次頁