土地取引 バブル期上回る勢い
区部南西部戻す(都調査)
 都内の土地取引が都心の一部を除いて、バプル期を上回る勢いに戻っていることが、都が三日まとめた「東京の土地1998」で明らかになった。土地の取引についての調査は、都道府県レベルでは初めての試みという。バプル崩懐後の地価下落で、土地の取引が全体的に通常の取引に戻りつつあることを示す一方で、「不良債権」化した都心の土地が「塩漬け」状態になっていることが分かった。調査は一九八七年から九七年までの十一年間について、登記簿の閲覧調査から得られた五十万件以上の民間の宅地取引データを分析した。
 都内の土地取引はバブル期の八七年には、年間五万四千三百五十二件で、取引面積は九百七十三万四千百十四平方㍍だったが、バブル崩壊後の九二年には、それぞれ三万千三百ニ十六件、五百六十九万二千九百十一平方㍍に落ち込んだ。その後九六年には取引面積で、九七年には取引件数で、バフル期のピーク時の水準を上回っている。
 地域的には、八王子市や武蔵野市などの多摩地区で、バブル期の水準を大きく上回っているほか、品川、目黒、大田などの区部南西部でも、バブル期の水準近くまで戻っている。一方、千代田、中央、台東などの都心部では、バプル期に比べ、取引面積で七割強、取引件数で六割程度にとどまっており、都心の土地取引が、なお停滞していることが分かった。
 都では調査結果について、「地価が下がった分、売買が活発化している。取引量の縮小には必ずしもつながっておらず、土地取引市場の流動化を目標とする政府の土地政策は、不良債権になっている土地が多い都心部に限定するべきではないか」としている。
 また、昨年の都内の新規分譲マンションの一戸あたりの平均価格は、多摩で四千百八十万円と八年連続で下落し、区部でも四千八百十五万円と三年ぶりに下落している。都内のサラリーマンの三人世帯が、国の居住水準目標としている七十五平方㍍のマンションを取得するには、区部では年収の六・九倍が必要だった。
《出典》朝日新聞 (11/06/04) 前頁      次頁