私が期待する21世紀技術
電気自動車の性能磨け(佐和 隆光氏)
20世紀は情報通信の世紀だった。情報通信は、かつての鉄に代わり、日本経済をけん引する主役になった。その知的成果は、人類にとって未踏の大陸である脳の解明にも生かされつつある。その情報通信や脳科学のあとは何が主役になるのか。

私はエネルギーと地球環境技術だとみたい。現在の技術体系は、地球温暖化問題に対する備えを欠いている。だからこそ、21世紀の社会は、エネルギーを安定して供給できると同時に、二酸化炭素(CO2)などの温暖化ガスの排出が少ない新技術を必要とするだろう。

まず電気自動車用の小型・軽重・大容量の蓄電池がほしい。現在の電気自動車は、ガソリン車に比べ走行距離が短く、高速が出しにくく、価格が高いといった短所がある。
これは電気エネルギーを蓄える蓄電池の性能が低いせいだ。蓄電池は長らく鉛蓄電池の時代が続いた。最近、ニッケル水素蓄電池やりチウム蓄電池など新型の蓄電池が登場してきたが、もっと性能を高めた画期的な蓄電池を開発し、性能面でも価格の面でも、ガソリン自動車をしのぐ電気自動車を作ってほしい。
CO2を排出しないという点では水素を燃料にして走る水素自動車も望ましい。CO2を全く出さない車へのつなぎとして、電気とガソリンのハイブリッド車や、天然ガス自動車も21世紀初頭に必要な車となるだろう。

住宅用の低価格・高効率の太陽光発電パネルも重要だ。目標は「三㌔㍗の電気出力で百万円以下」。家庭では通常、三㌔㍗の電力を使う。そのための発電パネルを百万円以下にできれば、電力会社の商用電力とほぼ均衡し、太陽光発電は普及の時期を迎える。

過去の歴史を振り返ると社会がある種の渇望感や不足感を持っている時、新たは技術が登場し、時代の要請にこたえてきた。エネルギー・環境技術もまた21世紀の要請を満たす技術であるといえよう。(談)

*バックデータ*
電気自動車は環境問題への意識の高まりと、技術開発による高性能化が急速に進み、大量普及時代が近づいてきた。90年度末では国内普及台数は1317台だったが、96年度末には約2700台と倍増。今後も増加が見込まれる。特にリチウムイオン蓄電池は加速性能や走行距離の向上に大きく貢献している。自動車向けの実用化で先陣を切ったのは日産自動車で昨春から自治体向けなどにリチウム蓄電池搭載車のりースを始めた。
電池重量当たりの電力容量が鉛蓄電池の約3倍、ニッケル系電池の1.5-2倍。さらに高性能化できる余地が大きく、様々な企業が開発にしのぎを削っている。
《出典》日経産業新聞 (10/01/22) 前頁      次頁