「シックハウス症候群」急増
震災後の家屋新築(劣悪合板材使用が原因)
阪神大震災で約25万戸が全半壊などの被害を受けた兵庫県内で、家屋の新築や改築に伴い、目やのどの痛みを訴える「シックハウス症候群」が急増している。

同県生活科学センターに寄せられた今年度の苦情件数は、すでに前年度の6倍以上の19件に達した。

被災者は十分な建築資金がない場合が多いため、化学物質が発散しやすい劣悪な輸入合板材なとを、安価として使用したことが一因とみられる。

環境監視団体などは「消費者も建築業者も、建材の品質表示などに関心を持つべきだ」と警告している。

同センターによると、シックハウス症候群関連の苦情は、1994、95年度が各1件、96年度が3件だったのに対し、今年度はこれまでに19件に上っている。このうち半数以上が震災後の新築のケースだった。

一方、民間の「環境監視研究所」(大阪市港区)と「シックハウスを考える会」(大阪府四条畷市)がそれぞれ、発がん性が疑われる化学物質、ホルムアルデヒドの濃度を震災後の新築家屋で測定したところ、計15軒中13軒で厚生省指針の0.08ppmを上回り、目が痛くなるレベル以上だった。
最も高濃度だったのは神戸市内の会社員の新築住宅で、厚生省指針の22倍もの1.8ppmを記録。はっきりした臭気で不決感を感じるとされる0.5ppmの3倍以上で、大工が建設中に「目が痛い。体がかぶれる」などと訴えていたほどだったという。

日本合板工業組合連合会(東京都港区)は「輸入合板が増えているのは事実。昨年12月にはホルムアルデヒド発散量の品質表示が強化されたので、よく確かめてほしい」と言い、環境監視研究所の中地重晴研究員は「化学物質に囲まれた生活のあり方を見直すべきだ」と話している。
(大島秀利、八重樫裕一)
《出典》毎日新聞 (10/03/02) 前頁      次頁