山場迎える表示基準づくり
木造軸組では「みなし仕様」も整備
 来年6月の施行に向けて住宅性能表示制度への関心が高まっている。制度の全容が見えないなかで、下に示したような誤解もある。
 一方で、「制度の規定を満たした住宅をつくるにはどうすればいいのか」という不安を抱く住宅会社も多い。結論から言えば、複雑な計算などをしなくても、表示された性能水準を満たした住宅づくりが可能になりそうだ。建設省の告示や日本住宅・木造技術センターがまとめるマニュアルなどで、それぞれの性能を満たす仕様の具体例が示されるため、それを参考にすればいいからだ。
 11月末の公表を目指して建設省が原案を作成中の「評価方法基準」(建設省告示)には、性能表示に対応する仕様を定めた"みなし仕様"が盛り込まれる。同省住宅生産課の真鍋純課長補佐は「少なくとも木造軸組については、面倒な計算なしで性能表示に対応した家づくりができるようにしたい。このためのみなし仕様を告示に盛り込む方向で煮詰めている」と話す。
 
表示する性能を端的に説明。共通の表現方法を示す。
 建設省の「告示」では、性能表示制度の細かい内容が整備される。「日本住宅性能表示基準」と呼ばれる基準では、性能を表示する細目ごとに表示方法が示される。それは、「等級1」といったランクや「耐火時間○時間」といった数値で表示される。
 さらに、その表示項目ごとに、「等級1の性能とはこういうもの」といった、性能を説明した文章も盛り込まれる。今までは「私の住宅の性能はこういうものです」と説明しても、各社でその表現がバラバラだった。しかし今後は、表示方法やその性能の説明方法が明記されることで、住宅会社や消費者が共通した表現で性能を語ることができる。

日本住宅・木造技術センターが、図解マニュアルづくり。
 一方、表示する項目について、「評価方法基準」も整備される。これは、それぞれの性能を評価する方法を示したものだ。この評価方法は2本立てになる。一つは構造計算など性能を確認する手法を示したもので、いわば "性能型"の基準。もう一つは、「柱の太さが○a」などと、表示される性能を満たす具体的な仕様を示す"みなし仕様型"の基準だ。
 冒頭で述べたように、この"みなし仕様型"を参考にすれば、細かい計算なしで、表示された性能をクリアすることができる。
 もちろん、建設省が告示でまとめる"みなし仕様型"の基準は、文章でしか示されないし、その情報量も限られる。そこで、日本住宅・木造技術センターでは、告示の仕様をわかりやすく図解したマニュアルづくりを進めている。
 木造軸組工法だけでなく、ツーバイフォー住宅でも告示の評価方法基準に"みなし仕様型"が盛り込まれるとみられる。またツーバイフォー協会は評価が簡略化される「住宅型式性能認定」を取得する方向で、検討を進めている。

住宅性能評価機関に新会社が相次いで名乗り。
 住宅性能表示制度は施行に向けて大きな山場を迎えている。まもなく、建設省は表示する性能の項目やその評価方法についての原案を公開する。その後、約1カ月間にわたって原案に対する意見を広く募り、2000年6月には基準を施行する予定だ。
 住宅性能表示制度はあくまで任意の制度で、義務ではない。住宅の性能を表示するためには、住宅性能評価機関に評価を依頼することになる。最近では、性能評価機関を目指す会社が相次いで登場している。
 東京電力、三菱商事、アルファプライム・ジャパンなどが設立する新会社や、トステムなど11社が共同出資した日本住宅保証検査機構などが性能評価機関に名乗りを上げている。2000年秋には、各都道府県で1機関以上の性能評価機関を建設大臣が指定する予定だ。
《出典》日経ホームビルダー (11/11/22) 前頁      次頁