狭い敷地を広くする工夫 | |
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「住まいづくりのネットワーク」が提案 | |
狭い敷地でいかに広く住まうか、新築や建て替えをしようと思っている人にとって頭を悩ませる問題だ。特に15坪(約49.5平方㍍)以下だと住宅メーカーに断られることも多く、家づくりをあきらめてしまう傾向が強い。しかし、ちょっとした工夫で広い生活空間が得られる。 建築家や環境デザイナーらで作る「住まいづくりのネットワーク」(東京都新宿区)では、地下室の利用や視覚的な広がりの応用などを提案している。【樽味 典明】 千葉県市川市のJR市川駅から歩いて10分ほどの住宅密集地に建つ志村さん宅。 敷地はわすか12坪だが、家の外観は大きく見える。2階建て、半地下でロフト付き。1995年3月に完成した。一家は3人。引き戸の玄関扉を開けて階段を上がって1階へ。 さらに引き戸の内玄関を開けると、そこはリビングダイニングキッチン(約11畳)。 右手の階段を下りれば地下へ、上がれば2階へ。階段上は吹き抜けになっているので広々としている。 地下は居室(約6畳)、浴室、トイレ。太陽の光も差し込むようになっているので、決して暗くない。階段下は収納に有効に使われている。2階は6畳の和寝室。 ベランダは幅90㌢しかなく、障子とガラス戸を開けてくぐり抜けるような感じで出るので多少狭い印象だが、洗濯物や布団を干すには十分だ。 2階からロフトへは、はしごを使う。ガラス張りで非常に明るい。 延べ床面積は約73平方㍍、総工費は約2000万円だった。 「よくこんな大きな家が建ったなあと感心しています。私たちは平面的には分かっていても立体的にはとらえられない。相性の合う専門家を見付けることが成功につながると思います」と居住者の志村直子さん(37)。 志村さん宅を設計した同ネットワークのメンバーで建築家の舩津基司さんは、狭い敷地での家づくりについて次の3点を提案する。 【視覚的な広さ】物理的な広さは決まっているので、視覚的な広がりをプランの中にうまく取り込んでいく。遊びの空間や吹き抜けは、もったいないと考えてはいけない。 廊下や階段もインテリアとして取り込むことが、広がりをつくる一つの方法。 【庭をつくる】家を敷地のどちらかいっぱいに寄せて建てる。普通、敷地の真ん中に建てて、建物の周りを空き地にするが、狭小の敷地では単なるすき間に過ぎす、せいぜい設備機器の設置場所になるだけ。一方に寄せて建てれば結構な広さの庭が見えてくる。 【地下室の利用】完全に地盤面より下につくられた地下室と、地盤面から1㍍以内だけ地上に出ている地下室は建ぺい率の計算をする時には算入されない。狭小敷地では建ぺい率いっぱいに建物を計画しても、その敷地の容積率を十分に生かすことは日照権などの関係で出来ないことがほとんど。そこで地下室の容積制限の緩和などを利用して生活部分の床面積を広げることが可能になる。 舩津さんは「限られた土地では横に伸ばすことは無理なので、上下をうまく増やすことが大切です。15坪以下の土地の人は、建て替えは最初から不可能だと考えている人が多いようですが、10坪くらいでも十分可能。あきらめないでください」と話している。 「住まいづくりのネットワーク」は建築家や工芸家、施工家、環境デザイナーらが92年9月に設立。ローコスト住宅や木造3層住宅、高齢者住宅をテーマにしたセミナーなどを実施してきた。現在メンバーは11人。 同ネットワークでは13日に東京都豊島区の区立勤労福祉会館で、狭い敷地内での上手な建て方を具体例を挙げてアドバイスするセミナーを開催する。参加費は1000円。 間い合わせは同ネットワーク事務局(03-5996-2068)へ | |
《出典》毎日新聞 (09/09/08) | 前頁 次頁 |