ライトの設計でマイホームを!
著名建築家の設計と思想を導入
これまでの住宅業界には皆無で、住宅デザインのブランド化の先駆けとなるか注目される。この新たな試みに、スポットをあて取材した。

ライト財団との提携でブランド化を実現大手総合商社の伊藤忠商事㈱(東京都港区・室伏稔社長)は、米国建築家フランク・ロイド・ライトの未建築設計図書200の販売権利を獲得。平成10年4月から、フランク・ロイド・ライト財団と提携し、住宅ブランド「ユーソニアン21」プロジェクトをスタートさせる。
同社がプロジェクトでめざすものは、商社という枠組みを打ち破った「本格的なりテール(小売り)ビジネスの開拓」。5年間で1000棟の建設、2000棟のOEM建材の販売を事業目標に掲げ、さらに生活物資、家具、インテリアなども販売するシステムの構築をはかっていく。同社は、住宅市場の低迷に対し「日本の住宅のデザインの魅力の欠如」「本当によい家は高価格で手が届かないという絶望感」などがエンドユーザーの意識にあり、住宅購入に消極的になる、と分析。

そのために、帝国劇場や自由学園を設計し、日本でもよく知られた建築家ライトを全面に打ち出し、その思想やデザインの魅力で「他社製品との確固たる差別化」を実現する徹底したブランド戦略を展開。また、価格面では普及タイプが坪50万円程度、高級注文住宅で80万円程度に抑えていく。
入札制のオリジナル設計計画から安価な建売まで計画同社が供給する住宅商品シリーズは、次の4商品。

①フランクロイドオリジナルデサイン200
ライトの未建築200作品の完全復刻版であり、ライトの遺言に従い、1図書に
つき1つの住宅を建設。販売価格は入札制とし、来年度に5-10棟程度を建設する予定。

②エクジビットハウス
ライトが晩年に設計したExhibit Houseを基にした60坪の住宅。オリジナルデザインの中で唯一量産するもので、坪単価100万円。プロトタイプ・ショールームを軽井沢に建設し、4月1日より一般公開(有料)する。

③オーガニックハウス
ライトの設計コンセプトを生かした建売住宅。都市型は30~50坪、郊外型は50~70坪で、坪単価は50万円。

④アップグレードオーガニツクハウス
ライトのオリジナルデザインを、ライト財団傘下の設計事務所が現代風にアレンジする高級注文住宅。延床面積60坪以上の家で坪単価は80万円程度を予定。コスト削減にメタルフイツト工法規格化で対応前出の4商品中でも、「ユーソニアン21プロジェクト」における核となるもの、と同社が位置づけているのがオーガニックハウスだ。そのプラン・仕様は来年3月めどに開発する計画だが、「ライトの思想を生かし、ハードからでなく、どう生活していくかというソフトから考えたい」といい、「割石を敷いたランドスケープを設け、関ロ部を大きくとる。
敷地いっばいに建設するのではなく、あえてバルコニーをとり、内外の空間を一体化する演出をしていく」。また、コスト・コントロールのために、資本提携したカトウ産業㈱(島根県安来市・加藤正雄社長)のメタル・フィット工法を取り入れ、工期の短縮をはかる(解説参照)。モジュールはmと910、関東間のみとし、屋根を陸屋根とする。木製サッシや外装材、珪藻土、PC(プレキャストコンクリート)基礎など部材とその仕様の共通化をはかつていく。さらにこれらの建材はオーガニック建材として、「ユーソニアンブランド」名でライセンス販売する計画だ。
営業は伊藤忠、施工は契約工務店、住宅の供給方法は伸藤忠商事がエンドユーザーに営業し契約を結び、契約工務店が施工する。工程管理や資金のキャッシュフローを作成でき、完成保証ができる工務店を対象に提携していくとしている。
「このプロジェクトはFCではないため、互いに役割を認識して初めていい関係が生まれる。そのため、建材の値段交渉も一切しない。この考えを理解してくれるところをしっかり選択したうえで提携していく」と同社では考えている。
問い合わせは同社セラミック資材部景観資材課(03-3497-6461)まで。
《出典》新建ハウジング (09/12/10) 前頁  次頁