産業廃棄物問題(全業界挙げ改善目指す)
鹿島専務 庄子幹雄氏
全業界挙げ改善目指す
建設は再利用率8割へ

北関東の郊外。
田んぼの真ん中に高さ10m以上のゴミの山がある。住宅を解体して出たと思われる木くずが無造作に積み重なっている。家庭ゴミも混じって、辺り一面には悪臭が漂っている。
この産業廃棄物の不法投棄現場では、93年7月から昨年5月まで処理業者が夜中に廃棄物を捨てていった。その量は全部で1万t、ダンプトラック1500台分に相当する。ここ数年の間に、こんなゴミの山が日本全国のあちこちにできた。
「これでは建設業界が浮かばれない。何としても産廃問題を解決しなければならない」。ゴミの山を前に、鹿島の庄子幹雄専務は意を新たにする。

庄子氏は昨年7月、経済団体連合会(経団連)の廃棄物部会長に就任した。今後数年、部会に所属する36団体を束ね、産廃問題改善に向けて産業界の舵を取っていく。
部会長はこれまで家電業界から3代続けて就いていた。ここに来て、建設業界にお鉢が回ってきたのは、建設業界に対する世間の目が厳しくなっていることと無緑ではない。
昭和40年代に大量につくらた建物がこれから更新期を迎え、解体によって出る廃棄物が今後急増すると見られていることもある。
「就任を要請された時には正直、どうしたものかと迷った」(庄子氏)が、「建設業界の汚名をそそぎたい」とあえて火中の栗を拾うことを決意した。
経団連は昨年7月、自主行動計画を策定。建設業界はこのなかで、2000年までに廃棄物の最終処分率を20%削減し、リサイクル率を80%にアップするという目標を立てた。産廃問題で最も深刻だと言われているのが不法投棄の問題だ。昨年6月には廃棄物処理法が改正され、不法投棄をした会社には最高1億円の罰金を課すなど、罰則が強化された。「残念なことだが、一部に悪質な不法投棄者とそれに頼る企業がいる以上
罰則の強化もやむを得ない」と庄子氏は言う。
廃棄物処理法の改正で産廃問題改善に向けた新たな制度的枠組みは整った。あとは産業界の意識と行動にかかっている。
建設業界の産廃問題は当然のことながら、ひとりゼネコンだけの問題ではない。設計者をはじめ、ハウスメーカー、建材メーカーなど、業界の枠組みを越えた協力と知恵の結集が不可欠だ。
《出典》日経アーキテクチュア (10/01/12) 前頁  次頁