夫 建築基準法改正案が今国会に出ている
らしいけど、住宅が建てやすくなるのかな。
君は一級建築士だから詳しいだろう。妻 この法律は建物の安全性確認などのお
おもとになるの。日本の建築コストは海外よ
り2、3割高という評判で、その一因は海外
の資材などの使用を阻む建築基準法だ、と米
国などから言われていた。改正は規制緩和の
一環ね。併せて、建築物の完成後の検査など
が行き届かず、「ザル法」と言われる現状を
民間活力も使って改める狙いがある。
夫「性能規定」を導入するというのが改
正の柱だと聞いたけど。
妻 いまは、例えば柱の太さや壁の厚さな
ど、工法や材料を細かく決める「仕様規定」
なの。それを、「○○㌔の力に耐えられる」
というように、強度や防火性などで一定の基
準を示し、その満たし方は自由な「性能規
定」を中心に据える。
夫 それで、どういう利点があるの。
妻 これまでは屋根と一体で太陽電池を使
いたくても「不燃材」と認められない、といった不具合があったけど、それがなくなる。
条件を満たせば木造大型ドームもできる。輸
入資材を使いやすくなるし、コスト削減がで
きるかもね。設計ももっと自由にできる。
夫 容積率も緩和されると聞いたけど。
妻 容積率は敷地面積に対する建物の延べ
床面積の割谷で、接する道路の幅などをもと
に決まる。細い路地しかない密集地だと、高
い建物は無理ね。新しく建てる場合は例外的
に、表通り側と裏通り側の二つの土地を一つ
のものとみなし、表側の高い容積率を全体に
適用する仕組みがあるだけ。それを今回は、
すでに建物が立つ土地にも新たに認める。
夫 具体的に説明してくれないか。
妻 同じ面積の敷地が二つ並び、そこにた
つ建物の容積率を裏側が200%、表側が
400%とするでしよ。これが一体とみなされ
ると、二つの土地の平均として400%が認
められる。だから、建て増しや改築で、裏の
建物の容積率を400%にしてもいいし、裏
に新たに認められた容積率200%を表に回
し、表の客種率を600%にしてもいい。
うまくいけは都市部の士地の有効利用が進み、
住宅価格が下がることも期待できそうよ。
夫 検査業務を民間に開放するの?
妻 着工前の確認や完成後の検査は、自治
体の「建築主事」だけができるけど、一人当
たり年間600件の仕事がある。人手不足で、
違法建築が野放しになっているといわれる。
改正案では、一定の条件を満たす団体にも業
務を認め、検査を行き渡らせる考えよ。
夫 民間が乗り出すのかな。
妻 すぐには難しいかもしれない。採算を
気にしない役所と違って、民間の検査は割高
になりそうだし、民間側も休日サービスなど
で差別化するところが出てくるかもしれない
わ。確認や検査の結果などは、閲覧できる公
開資料にされる。違法建築の建物を、そうと
知らすに買ったりすると、実際に住んだり、
あとで売るときに困る可能性もあるから、業
者をきちんと選ぶことも必要になるわ。
山本 晃一(経済部)