古材を生かす知恵を
社説「建物解体」
 住宅を建て替える場合、機械を使って一気に壊してしまうことが多い。この「ミンチ解体」に問題がある。
コンクリートや木材、ガラス、金属、プラスチックのくずなどが混じり合って出てくるため、ほとんどリサイクルされない。処分場が次々に必要となり、不法投棄を引き起こす原因にもなっている。
 資源をむだにせず、環境への悪影響を減らすには、廃棄物を出さないようにするのが1番だ。耐用年数の長い住宅を建てるとともに、設計段階から補修をしやすい構造を考える必要がある。
同時に、解体されたものをリサイクルして循環させる努力が欠かせない。
 建設省はいま、木材やガラスなど資材ごとに分別解体することを義務づける法案づくりに取りかかっている。
リサイクルを促す分野別法律としては、成立すれば容器包装、家庭電気製品に次いで3つ目となる。高度成長の1960年代以降に大量に建てられた住宅や事務所の解体が大きな問題になりつつあることを考えると、いかにも遅い対応だ。
 法案の基本的な方向は、学者や業界を集めてつくった解体・リサイクル制度研究会の報告に示されている。
それによると、工事の施主は廃棄物の排出者として、解体だけでなくリサイクルの費用を負担するとともに、分別解体の計画を行政機関に届ける。建設業者や工事請負業者は分別解体したうえ、リサイクル施設に持ち込む義務を負わせられる。
解体についての施主と業者の役割分担は、妥当なところだろう。
 問題は、だれが最終的にリサイクルの義務を負うかである。
研究会報告は、有害性物質を含む資材に限って、建設資材メー力ーに自主的は回収などを検討するよう求めている。
これだけでは、木材やガラス、プラスチックなどが分別されても、きちんとリサイクルされるかどうか疑問が残る。
 資源を再生して利用しようという業者がたくさん出てこない限り、リサイクル率は大幅には上がらないだろう。
容器包装リサイクル法では、分別収集は市町村の役割、リサイクルはメーカーなど事業者の義務とされた。家電では、回収、リサイクルは販売店、メーカーの義務と定められている。
 建築物は容器包装や家電に比べ、解体・リサイクルまでに長い時間がかかるが、資材や建設の業界全体ならリサイクルの責任を引き受けることができるはずだ。
資材メーカーや建設業者がリサイクルの義務を負うことになれば、最初から有害性物質を含まず、再生しやすい資材をつくったり、使ったりするだろう。建設業者が、再生した資材を使うことも期待できる。
 循環型の社会をつくるには、回収、リサイクル、再生品利用の流れを途切れさせないことが肝心だ。
 今回の制度づくりでは、生産者の責任があいまいになり、容器包装や家電よりも後退している。その原因は、各省庁が所管業界ごとに、てんでに法律をつくろうとしているからだ。これでは、業界の事情や商慣習に引きずられかねない。
今からでも、廃棄物とりサイクルを総合的ににらんだ基本法をつくる必要があろう。その際は、廃棄物を出さないことを最優先し、排出者や生産者の責任をはっきりさせることが、なにより大事だ。
《出典》朝日新聞 (10/12/06) 前頁  次頁