欠陥住宅:消費者寄りに
紛争処理機関の審査基準の原案
 今国会で成立の見込みになっている住宅品質確保促進法案に盛り込まれ、欠陥住宅を裁定する紛争処理機関(新設)の審査基準の原案が3日、明らかになった。基礎部分などの欠陥が重大な場合、請負業者の責任を認定し、修繕の「勧告」を行う。紛争処理機関は建設省指定となるため、勧告は事実上、「強制的」なものとなり、欠陥住宅の入居者は、民事訴訟でも有利になるメリットがある。欠陥住宅に対し、泣き寝入りすることが多い入居者を保護することが目的だが、住宅メーカーからは「消費者に寄り過ぎではないか」(大手幹部)と反発の声も上がっており、政府がどこまで業者の責任に踏み込めるか、注目を集めそうだ。
 同法案の成立後、政府は、消費者団体代表や弁護士、建築士、学識経験者で、紛争処理機関の設置のための専門委員会を設立。法案成立から1年以内に、審査基準を決定し、同機関をスタートさせる。

 審査基準の原案によると、例えば、床の傾き具合に応じてランク分けし10メートルあたり6センチ以上の傾きは欠陥と認定する。また同1センチ未満は誤差の範囲内として、欠陥とはしない。この中間の傾きについても、法案成立後1年以内に、細かい基準とその対応を決定する。

 政府筋によると、傾きが6センチ以上で欠陥と認められれば、業者が修繕する責任を明確に認定。紛争処理機関は、法的強制力は持たないものの、欠陥工事を行った業者に「さまざまな形で改善を求める」(政府筋)という。このほか屋根の雨漏りや外壁の亀裂などについても、業者責任の基準を定める。

 同法案は、住宅版の製造物責任(PL)法といわれるが、当初案では、欠陥住宅を造った業者が、欠陥でないことを「反対立証」する責任を明記したが、大手住宅メーカーなどが「反対立証の規定はPL法になく、同法案に入れるのはおかしい」と政府に抗議し、法案から削除された。このため、政府は、「法律で無理なら、紛争処理機関の運用によって、消費者を保護する」(政府筋)と路線転換し、法律で明文化することと同じ効果を狙うことにした。
《出典》毎日新聞 (11/04/04) 前頁  次頁