住宅品質確保促進法の仕組みと概要
住宅の格付制スタート
10年の瑕疵担保責任義務化
【概要】新築住宅の完成引き渡しから10年間、瑕疵(欠陥)があった場合、建主は施工者に対して、無償の補修か損害賠償の請求ができ、瑕疵が認められれば施工者はこれに応じなければならない。また売買契約の解除請求もできる(解除は売買契約のみで補修不能の場合に限る)。任意で20年保証も可能。
*現在は民法で瑕疵担保期間として木造住宅で5年間、RC住宅では10年間を定めているが、工事約款の特約で木造は2年程度に短縮しているケースが大半。品質確保法ではこの特約は認めない。すべての新築住宅に10年間の瑕疵補償が義務付けられる。このため、万が一の補修や損害賠償に備えて独自に保険をかけるか(財)住宅保証機構の保険制度に加入する工務店が増えている。
【対象】瑕疵の対象は、新築住宅の①構造耐力上主要な部分(基礎、壁、柱、小屋組、土台、筋交い、床板、屋根版、横架材など/ただし仕上げ材は除く)②雨水の浸入を防止する部分(屋根、外壁、外まわり建具の取り付け部分など)
【今後の予定】建設省は主要構造部・雨漏り防止部の部位の特定と、瑕疵かどうかを判断する基準は「技術的参考基準」を流用する予定

性能表示制
【概要】住宅の性能面を公に認め(評価)、それをユーザーに表示できる新しい制度。任意性なので、評価を受けても受けなくともよい。性能評価・表示の項目と内容は現在検討中。手続きは「指定住宅性能評価機関」という民間機関が個々の住宅に対して設計図書の審査と施工中・施工後の検査を行い、性能評価書を発行するかたちになる。評価は全項目を一括して受けなければならない。評価費用は10万円程度と建設省は推定している。規格型住宅など標準設計や標準仕様モデルをもっているところは設計図書審査を簡略化する「住宅型式性能認定」の特典を設けてある。
*住宅の性能を評価する法的な仕組みはこれまで(建築基準法の基準以外)なかった。それだけに、高性能認定住宅という法的なお墨付き(格付)がうまれたとき、ユーザーがどう受けとめ、住宅(住宅会社)を選択する際の判断材料にするのか注目されている。
【対象】現時点の性能評価項目と評価・表示内容(案)は下の図の通り。室内空気環境(健康性能)を項目に加えるか、その場合どこまで評価・表示するのか焦点となっている。また、音性能も任意にするか検討中。
【今後の予定】性能評価項目と統一ルール「日本住宅性能表示基準」は性能評価技術検討委員会(内田祥哉委員長)が原案を作り、現在、業界団体などに意見聴取しているところ。9月に中間報告し、年内に取りまとめする意向

紛争処理機関
【概要】性能評価・表示を受けた住宅に関して、住宅会社とユーザーの間にトラブルが起きたときは、建設大臣指定の「指定住宅紛争処理機関」がその処理(斡旋、調停、仲裁)にあたる。機関は単位弁護士会か民法34条法人(全国各地の住宅センター)を想定する。ただ、この機関には当初、十分な情報がないため、建設省所管の法人「住宅紛争処理支援センター」が各地の紛争事例とか判例といった情報提供などの支援をする。このセンターには(財)日本住宅リフォームセンターを想淀し準備を進める。
*トラブル発生では、今まで直接裁判所か、中央・地方建設工事紛争審査会に持ち込んでいた。今回の処理機関は性能評価住宅のみを対象としているが、紛争処理の申請にかかる費用は1~2万円程度でトラブル処理の間口がひろがる。
【今後の予定】処理機関が斡旋、調停、仲裁にあたって、裁定の根拠となる「技術的参考基準」を年内にはまとめる
《出典》新建ハウジング (11/06/30) 前頁  次頁