「携帯と脳しゅよう」
影響の有無で国際調査へ
 携帯電話から出る電磁波の発がん性が懸念される中、脳しゅようなどへの影響の有無を本格的に調べるため、日米欧14カ国が協力し、脳しゅよう患者の追跡調査を今秋から共同実施することが決まった。
 世界保健機関(WHO)が設立した国際がん研究機関(IARC、本部・仏リヨン)を中心とする国際プロジェクトで、日本では、郵政省が今秋から、首都圏の脳しゅよう患者ら500~600人に聞き取り調査をする。最終報告は2003年ごろにまとまり、携帯電話の人体への影響について科学的な根拠に基づく結論が出ると期待される。

 携帯電話に使われる電波は1.5ギガヘルツ(ギガは10億)前後の高周波に属し、電子レンジで使うマイクロ波に近い。出力は弱く熱作用はないが、高周波の電磁波を浴びると、細胞分裂の際の異常や遺伝子の損傷を起こす可能性があると指摘されている。このため、携帯電話のアンテナが発する微弱な電磁波が脳に影響し、脳しゅようを引き起こすかもしれないという不安が世界的に広まっている。

 国際共同調査は、世界で脳しゅよう患者3000人と一般の3000人を対象に、両グループの携帯電話の使用頻度などを比較し、電磁波の影響を割り出す。郵政省は日本脳神経外科学会に協力を求め、9月から2年間、首都圏などの病院200~300施設で脳しゅよう患者500~600人の症例を集める。

 各人がどれくらいの頻度、期間で携帯電話を使用していたか、通話の際にアンテナを伸ばしていたかどうかなどを尋ね、通話記録から通話時間を推定する。

 郵政省はラットの実験結果から「現時点では脳に障害を与えるという証拠はない」とする見解を出しているが、人体についての本格調査がなく不安をもつ人もいるため、国際調査への参加を決めた。
《出典》毎日新聞 (12/05/02) 前頁  次頁