建築の世界を目指す女性にエールを送る | |
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新しい共同生活の形提案したい 栗原礼子さん | |
女性建築家の草分けの林雅子さん、現在活躍中の妹島和世さんなど、建築、住居に携わる多くの人材を輩出してきた日本女子大住居学科が今年、50周年を迎えた。栗山さんは同窓会「住居の会」の会長を務める。 「東京の街中、いろんなところに自分の建てたものがあるようにしたい」。そんな夢を抱いて、栗山さんは同学科に入学した。卒業後、アトリエ事務所に就職を希望したが、どこも「女はいらない」。24歳で一級建築士の資格を取ったが、ヘルメットを被って現場に監督に行っても、職人さんが信用しない。「はなから甘く見られ、『危ないから入っちゃだめ』と言われたこともありました」 1983年に独立。自分の事務所を構え、個人住宅やマンションで「東京の街をいっぱいに」の夢を実践し始めた。今度は客から「キッチンや収納の使い勝手を女の人なら分かってもらえる」と期待されるようになった。初めて建てたのは建坪11坪(33平方メートル)の総2階建ての家。東京・板橋の近鉄の野球選手宅だった。以来、手がけた物件は「1000万円台の小さな家から1000戸規模のマンションまで、10年前で300件を超えましたが、それ以降は数え切れなくなりました」という。 建築現場での苦労はいまでも残る。「男の人の中には女性から指示されることに強い抵抗がある人が少なくありません。初めて会う職人さんは相手の言うことを聞いてやるかやらないか『さあ勝負』と待ち構えています」。鉄骨の数が足りないといったトラブルがあると、その場で自ら壊してしまうのが“栗山流”だ。「口で『直して』と言っても次に現場に来たときにはコンクリートに埋もれて確認できません。手強いと思われないと、仕事になりませんから」と言い切る。 現場での「硬」と、電気コンセントの配置に気を配る「軟」の両輪で造る栗山さんの家を気に入り、自宅、別荘、娘の家をすべて依頼した顧客もいる。「規模や金額ではなく、依頼主と共鳴できるかどうかを大切にする仕事のやり方は、男の建築家とは全然違うかもしれない」と感じる。 今年9月、栗山さんは「卒業生3619人の世界」と題した母校住居学科の文化祭を開いた。1期生から現役生まで集まった約1500人を前に「先輩たちがまいた芽が引き継がれ、花開いているのを感じた」という。来年には建築設計で優秀な成績を修めた学生を表彰する「林雅子賞」を創設することになり、準備に追われている。「東大建築学科も女性が半数を占めるなど、建築への女性の関心は高まっていますが、現場はまだまだ追いついていません。若い人に少しでもエールを送れれば」 栗山さんのこれからのテーマは「共生」だ。「たとえば何人かが交代で食事を作り合うと、台所に立つ回数がぐんと少なくなります。血縁ではない新しい共同生活の形を提案していきたいです」。嫁がひとりで年老いた親をみるような高齢化社会問題の解決策にもなる、と栗山さんは考えている 現場での「硬」と、電気コンセントの配置に気を配る「軟」の両輪で造る栗山さんの家を気に入り、自宅、別荘、娘の家をすべて依頼した顧客もいる。「規模や金額ではなく、依頼主と共鳴できるかどうかを大切にする仕事のやり方は、男の建築家とは全然違うかもしれない」と感じる。 今年9月、栗山さんは「卒業生3619人の世界」と題した母校住居学科の文化祭を開いた。1期生から現役生まで集まった約1500人を前に「先輩たちがまいた芽が引き継がれ、花開いているのを感じた」という。来年には建築設計で優秀な成績を修めた学生を表彰する「林雅子賞」を創設することになり、準備に追われている。「東大建築学科も女性が半数を占めるなど、建築への女性の関心は高まっていますが、現場はまだまだ追いついていません。若い人に少しでもエールを送れれば」 栗山さんのこれからのテーマは「共生」だ。「たとえば何人かが交代で食事を作り合うと、台所に立つ回数がぐんと少なくなります。血縁ではない新しい共同生活の形を提案していきたいです」。嫁がひとりで年老いた親をみるような高齢化社会問題の解決策にもなる、と栗山さんは考えている | |
《出典》毎日新聞 (13/11/17) | 前頁 次頁 |