「千夜千冊」の書評を完結させた
松岡正剛(まつおか・せいごう)さん
 ◇バーチャル空間の「図書街」づくりが次の夢--松岡正剛(まつおか・せいごう)さん
 主宰する編集工学研究所のサイトを開設する時に、「お客さんにのぞいてもらわねば」と1日1冊、全1000冊の書評をやろうと決意した。日程をやりくりして、ほぼ毎日数時間、3000字から5000字の文章を書く。それも原稿料なしで。途中で「しまった」と後悔したが、「手遅れでした」。
 00年2月23日の第1夜は中谷宇吉郎「雪」。第300夜のハーマン・メルビル「白鯨」、第900夜の宮沢賢治「銀河鉄道の夜」などを経て、7日の「良寛全集」で完結した。当初はアクセスが月40件程度だったが、今では23万件に。文化人類学者の山口昌男さんは、このぜいたくな読書案内を「21世紀の知を俯瞰(ふかん)する偉業」と呼んだ。
 「本という小さなコスモス(宇宙)はただものではない。開くだけでラグビーでもクロアチアでも調べられる。何かを知るには、本が一番高速なんだと伝えたかった」
 本業は、集めた情報の間に関係性をみつけて集大成し、新しいものを創造するエディトリアル・ディレクター。
 ルーブル装飾美術館展、歴史教育ビデオ制作などジャンルを超えた仕事でアート・思想界を刺激し、日本文化の案内人としてもカリスマ的人気だ。
 次の夢は600万冊を収蔵した本棚をそっくり街にする「図書街」を、バーチャル空間につくること。本を引き出せば内容がのぞけるといった設計図もできている。<文・佐藤由紀/写真・尾籠章裕>
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 ■人物略歴
 1944年京都生まれ。早大卒。編集工学研究所所長、帝塚山学院大教授。
千夜千冊はhttp://www.isis.ne.jp/で。
《出典》毎日新聞 (16/07/08) 前頁  次頁