建築設計事務所に依頼する家づくりとは | |
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予算、土地…制約多いほど利点 | |
話し合い夢実現 建材、構法納得して選ぶ もうすぐ正月。建築設計事務所への住まいの相談は、家族が集まって話す機会が多い正月と盆が明けたころに増えるという。一戸建ての新築をどこに頼むか。設計事務所は「敷居が高い」「お金持ち専門」と思う向きが多い。しかし、こだわりが強く、予算や土地の制約が多い人こそ検討の価値がある。 家を建てるには、大手のハウスメーカー▽地域密着の工務店▽設計事務所 に依頼する方法がある。設計事務所との家づくりに興味を持つ市民を集め、大阪府建築士会の若手メンバーが先月開いた講習会「家づくりシミュレーション」(大阪市立住まい情報センター主催)をのぞいた。 参加者と建築士が紙と鉛筆を挟んで話し合っている。肝心なのは施主の「夢」と「理想」だ。「休日をゆっくり過ごす」「狭くてもガーデニングを楽しむ」「老後を健康に生きる」。そんな言葉を手がかりに建築士は質問を重ね、間取りが浮かび上がる。「住めればいい」では何も描けない。子どもは将来、家を出たがっているのか、結婚したら同居するのか。家族同士でも意外に知らない本音を話し合うことになる。 大阪市阿倍野区の会社員、松本英樹さん(39)は4人家族。偶然知り合った地元の建築士、牧野高尚さん(39)が自宅を設計し、03年12月完成した。身長182㌢の松本さんは足が伸ばせる風呂を希望。休日の夕食前に一家で風呂に入る時間を大切にしていた。そこで牧野さんは水回りから筆を起こした。風呂場の天井と壁にヒノキを張り、人造大理石の大きな浴槽を入れた。風通しへの配慮から窓の位置が決まっていく。 妻(35)が言ったのは「家族みんなの気配を感じられる家がいい」。東南の最も明るい角をダイニングキッチンにした。2階への階段もここ。上るとフリースペースで、長女(10)と長男(6)が宿題やゲームをし、下にいるお母さんに話しかける』暑い大阪の夏対策に、2階の南側はあえて廊下にしてある。 木造2階建て延べ92平方層で、設計料含め約2000万円。松本さん夫妻は「工務店選びからトイレットペーパーの取り付け位置まで話し合った。プロセスが安心だった」と振り返る。 今年8月に木造2階建てを新築した兵庫県西宮市の公務員の夫(37)と妻(36)は、5歳を頭に3人の子持ち。モデルハウスを回ったが「自分たちには不必要なものが多く参考にならなかった」。著書を読んで共感した大阪市の井上まるみさんの設計事務所を訪ねた。 共働きを続けながらにぎやかに子育て中の夫婦の理想は「家事動線が優れた家」。井上さんは2階にキッチンや居間を集め、子どもが小さいうちは平屋感覚で暮らせるようにした。延べ床面積152平方層で、外構を含む総額は4000万円弱。壁の中に通気層があり、夏涼しく冬暖かい。遮熱シートや断熱材を含め、見えない部分に費用をかけた。 井上さんによると、建材や構法次第では同規模の家でコストを約1000万円抑えられる。また、施工業者の相見積もりは500万円も差があった。井上さんは「設計事務所が入るとコストがはっきり見える。予算の制約が大きい人ほどメリットは大きい」と話す。 【鶴谷真、写真も】 | |
《出典》毎日新聞 (20/12/08) | 前頁 次頁 |